最高裁判所第一小法廷 昭和55年(行ツ)79号 判決 1986年10月23日
上告人
服部良子
右訴訟代理人弁護士
宇賀神直
永岡昇司
海川道郎
野村裕
阿形旨通
橋本二三夫
石川元也
戸谷茂樹
被上告人
大阪府教育委員会
右代表者委員長
若槻哲雄
右訴訟代理人弁護士
比嘉廉丈
右指定代理人
綾田清
青谷賢治
旗生孝
右当事者間の大阪高等裁判所昭和五一年(行コ)第二二号転任処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五五年三月二五日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があり、被上告人は上告棄却の判決を求めた。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
上告人の本件訴えを却下する。
訴訟の総費用は上告人の負担とする。
理由
職権をもって調査するに、本件訴えは、被上告人が上告人に対し昭和四七年九月一日付けをもってした転任処分の取消しを求めるものであるところ、上告人は、同年四月吹田市公立学校教員に任ぜられた者で、右処分当時条件付採用期間中の者であったうえ、右処分は、同市立第二中学校教諭として同校一年の国語を担当していた上告人を同市立山田中学校教諭に補する旨配置換えしたものにすぎず、上告人は、右転任先の山田中学校において、当初約一か月余り臨時に図書館の司書としての仕事を命ぜられたが、その後は国語の授業を担当し、翌年度は一年の担任となったことが記録上明らかである。そうすると、本件転任処分は上告人の法律上の地位になんら不利益な変更を及ぼすものでないことが明らかであるから、同処分の取消しを求める訴えの利益はなく、本件訴えは、不適法である。それ故、本件訴えにつき本案の判断をした原判決は、本件上告理由について判断するまでもなく、破棄を免れず、また、本案の判決をした第一審判決も、取消しを免れない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 谷口正孝 裁判官 髙島益郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 佐藤哲郎)